―――夏。
いつも遅くまで部活に励む水泳少女、深澤葉月。
苦手ながらも生徒会でがんばる少女、月無ゆゆか。
そして、あなた。
――――夏の暑さは日常を浸食し、奇跡的に3人の距離を近づけた。
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【葉月】
「……あーーーっ、終わった終わったーーーっ!」
【葉月】
「これでいよいよ夏休みだね……その始まりになるこの終業式に、
3人で帰るなんて久しぶりだね、これって………運命……?」
【葉月】
「は? 何が? 一緒に帰るのがどう運命なの!?
ゆゆかはほんっとに訳わかんない……!」
【ゆゆか】
「ふにゃぁ……」
【葉月】
「それにして、もうちの学校の制服はどうしてこう暑いのよっ!!」
【ゆゆか】
「……あはは、見た目は涼しそうなんだけどねぇ……。
終業式終わって、ちょうどお昼だから……」
【葉月】
「早く家に帰って楽なカッコになりたいわ……。
ハダカになってベッドにポーーンと……」
【ゆゆか】
「は、葉月ちゃん!
男子のいるところでそういうこと、言っちゃダメ……」
【葉月】
「え!? あーーーーーーっ!!? やっやっちょっ!!
影が薄いから忘れてたわ! このっ!
いるならいるってきちんと言いなさいよバカ!!」
【ゆゆか】
「最初からいたよ……たったいま3人で帰るの久しぶりって話してたばっかりじゃない……」
【葉月】
「あああーーーもうっ!! 暑いからっ! 油断してたわ!!」
【葉月】
「あーもう、こんなんだとどっか遠いとこでも行きたくなるわねー……
私たちももう来年は受験だし、ゆゆかは卒業しちゃうし、遊べるとしたら今年しかないもんね」
【ゆゆか】
「え……今年しか……?」
【葉月】
「そーよ、後悔しても遅いんだから!
あんたもゆゆかもだらーっとせずに今を生きる!これベストってわけ」
【ゆゆか】
「……後悔しても、遅い……」
【ゆゆか】
(この前、おじさんからもらった遊園地のペアチケット
……もし断られたりしたら、もうどうなっちゃうか分からないけど、けど………!)
【ゆゆか】
(誘って……みる……? そ、そんなことで、できるわけない……!
私、怖くって……無理!! 絶対無理……!!で、でも……がんばらなきゃ……!)
【葉月】
(今年が、最後のチャンス……。
でも、いままで私とこいつの性格じゃ、ちっとも先に進めなかったし……)
【葉月】
(そもそも、二人とも私がこいつのこと……その……、
あれだってこと、まったく全然!気がついてないみたいだし……!!)
【葉月】
(前途多難……どうすれば……打開しなきゃ……!)
【ゆゆか】
「この夏こそ……」
【葉月】
「この夏こそ……!!」